
はじめに
2025年4月9日、Google は新たなオープンプロトコル「Agent2Agent (A2A)プロトコル」を発表しました。この発表は、AI エージェントが相互にやり取りを行う基盤として大きな注目を集めています。特に、Anthropic が発表した Model Context Protocol (MCP)との関連性が語られ、「A2A はMCP を補完する存在である」と言及されています。
Agent2Agent プロトコル(A2A)を発表:エージェントの相互運用性の新時代
CData Software ではローカルおよびリモートMCP Server を提供していることもあり、これら2つのプロトコルがどのような位置づけを持つのかを整理する意義は極めて大きいと感じています。その背景には、今年に入り発表されたこれらのプロトコルが明確に実世界にどのように応用されるのか見えにくいからです。そのため、両プロトコルの理解が今後のAI 活用の可能性を考える上で必須ではないでしょうか。
CData Software は400種類を超えるAPI に対応したMCP Server の実装である『CData MCP Servers』の無償ベータ版をリリース
CData が世界初のマネージドMCP プラットフォーム『Connect AI』をリリース
そこで、本記事では以下の点を網羅しつつA2A の概念とMCP との関係性、そしてCData 製品が担う役割について書いていきます。
・A2A とはそもそも何か
・A2A とMCP が揃うことで、どのような世界が実現するのか
A2A 発表の背景
Google によると、AI エージェントはさらなる改善の余地があるとのことです。
AI エージェントの効果を最大化するには、分断されたシステムやアプリケーションを横断して、多様なエージェントがエコシステム内で連携できることが重要です。
Agent2Agent プロトコル(A2A)を発表:エージェントの相互運用性の新時代
このような課題認識のもと、A2A が設計されました。具体的には、現代のソフトウェアシステムは以下のような課題を抱えています。[1]
・AI エージェントが分散システム、クラウド環境、エッジネットワークなどの異種環境ごとに散在
・動的なAI エージェントエコシステムが従来のシステムアーキテクチャに対する脆弱性をもたらす可能性
・多様なAI エージェントへの対応
・AI エージェント間の安全で監査対応可能かつプライバシー準拠の連携の確保
これらを考慮すると、A2A が開発された背景の一つには「分断されたシステムに存在する多様なAI エージェントを安全に連携するため」と言えそうです。ただし、ここで言及されている AI エージェントという言葉には、やや曖昧さが残ります。なぜなら、多くの人が「AI エージェント」と聞くと、まず ChatGPT やClaude のような生成AI をイメージするからです。そのため、「AI エージェント同士が連携する」と聞くと、ChatGPT とClaude がA2A プロトコルに則りコミュニケーションするようなイメージを抱きがちです。
他にも、最近頻繁に耳にする混同しやすい単語の一つとして「エージェンティックAI」というものがあります。次章では、このA2A の根底にある「AI エージェント」という概念を整理し、A2A の役割をより明確に理解するための下地を準備していきます。
AI エージェントとは
AWS によるとAI エージェントは以下のような特徴をもっているソフトウェアプログラムです。
人工知能 (AI) エージェントは、環境と対話し、データを収集し、そのデータを使用して自己決定タスクを実行して、事前に決められた目標を達成するためのソフトウェアプログラムです。
自らの認識とデータに基づいて合理的な決定を下し、最適なパフォーマンスと結果を生み出します。AI エージェントは、物理インターフェイスまたはソフトウェアインターフェイスを使用して環境を感知します。
AIエージェントとは?
つまり、AI エージェントは環境を認識し、自律的に判断・行動するソフトウェアとして、単なる生成AIとは微妙な違いがあります。そして、AI エージェントを実装するために、様々なフレームワークが開発されています。[2]
LLMベース
その他
Claude も同様にClaude AI Agent SDKを提供し、ユーザ独自のClaude AI エージェントの開発を可能にしています。
Claude Docs Agent SDK 概要
エージェンティックAI とは
AI エージェントと混同しやすいものとしてエージェンティックAI があります。エージェンティックAI が注目されるようになった背景には、特定のユースケースにおいて単一のAI エージェントでは対応が困難であるという課題が明確になってきたことが挙げられます。具体的には、次のような要件で限界が見え始めました。[3]
そして、エージェンティック AIは大規模言語モデル(LLM)と強化学習(RL)を基盤として構築されます。LLMはエージェントに自然言語を理解・生成する能力を与え、人間らしい推論・計画・対話を可能にします。一方、RLはエージェントが自らの行動から学習し意思決定を継続的に改善することを可能にし、適応性と目標達成能力を向上させます。[2]
AI エージェント vs エージェンティックAI
AI エージェントとエージェンティックAI は以下のような異なる特徴を持ちます。[5]
| AI エージェント | エージェンティック AI |
登場年 | 1998年 | 2023年末 |
自律性 | 特定のタスクにおける高い自律性 | 多段階かつ複雑なタスクやシステムでも対応できる広範な自律性 |
得意分野 | 主に単一かつ特定な作業 | 下位タスクへの分解が可能な複雑な作業 |
連携 | 独立して遂行 | 複数エージェント間の情報共有および、協調 |
学習と適応 | 特定のドメイン内で限定的 | タスク間、環境間にわたり広範的 |
応用範囲 | 顧客対応チャットボット、バーチャルアシスタント、自動ワークフロー | サプライチェーンマネジメント、ビジネスプロセス最適化、バーチャルプロジェクトマネージャー |
以下の画像では、旅行の予約というシナリオにおけるエージェンティックAI とAI エージェントの挙動の違いが示されています。画像左側のエージェンティックAI では複数のAI エージェントが「旅行の予約」という目的達成のための段階的にサブタスクを実行しています。
一方、右側のAI エージェントは「フライト情報の検索と結果の応答」という限定的なタスクのみを実行しています。

(引用元: Agentic AI vs. AI agents, The Rise of Agentic AI: A Review of Definitions, Frameworks,
Architectures, Applications, Evaluation Metrics, and Challenges, Bandi et. al., 2025)
ここで留意していただきたいのがAI エージェントとエージェンティックAI の定義には「タスクを実行するAI エージェントの数」は関係ないということです。上の画像では"AI Agents"と複数形になっていることからも、そのことが言えます。A2A の文脈では、エージェンティックAI は複数のAI エージェントが協調することで実現される仕組みとして捉えられる傾向にあるかもしれません。
しかしながら、エージェンティックAIは、自律的に行動し、計画を立て、手順を調整しながら、最小限の人間の監視のもとで複雑な環境を扱うインテリジェントシステムを指すこともあります。[6] この定義に照らすと、十分な自律性や適応能力を備えていれば、単一エージェントであってもエージェンティックAI と見なせる可能性があるといえるでしょう。個人的な見解ですが、複数のAI エージェント間の協調を特に強調したい場合には「マルチエージェント」を用いる方が明確かもしれません。
以下の画像では、一言で語られがちなAIが実際には複数の領域を含み、それらが隣り合う領域と共通の概念を共有していることが示されています。

(引用元: A Venn diagram illustrating the conceptual foundations of agentic AI, The Rise of Agentic AI: A Review of Definitions, Frameworks,
Architectures, Applications, Evaluation Metrics, and Challenges, Bandi et. al., 2025)
A2A とは何か - ここまでの整理
A2A が開発された背景の一つとして、「分断されたシステム間に存在する多様なAI エージェントを安全に連携するため」であることを先に述べました。また、AI エージェントは限定的なタスクを独立して実行するよう設計されており、この点はしばしば混同されやすい関連概念との比較によって確認してきました。このような前提を踏まえると、次のようなジレンマが浮かび上がります。
「システムを横断して AI エージェントにタスクを実行させたい一方で、そのタスクは複雑化する傾向にあり、AI エージェントでは対応が困難である」
このジレンマを解消するためには、複数のAI エージェントが相互に能力を補完し合いながら協調動作する仕組みが不可欠です。A2A プロトコルは、まさにこの「エージェント間の協調」を標準化し、安全かつ相互運用可能な形で実現することを目的としたプロトコルです。さらに、A2A プロトコル、AI エージェント、エージェンティックAI の違いを整理すると、以下のように整理できると考えられます。
A2A プロトコル:複数のAI エージェントが安全かつ監査可能な形で協調できるようにする標準的な仕組み
AI エージェント:限定的なタスクを独立して実行するよう設計された自律式ソフトウェアプログラム
エージェンティックAI:複数AI エージェントの協調、あるいは高度な自律性を備え、複雑なタスク遂行が可能になったソフトウェアプログラム
A2AとMCPの統合
このように、A2A は「AI エージェント間の連携を可能にする」ためのプロトコルです。そして、AI エージェント同士が連携して複雑なタスクを遂行する際には、ほとんどの場合、複数のデータソースや外部サービスに依存することになります。実際、そのようなタスクの多くは、「複数のシステムにまたがる包括的な情報収集」「外部サービスへの問い合わせ」「異なるアプリケーション間で一貫性のあるデータ反映」などの処理から構成されています。
この「AI エージェントとデータソースへのアクセス」の橋渡しを行う仕組みがMCPです。MCPはAI エージェントが外部のデータソースやサービスにアクセスできるようにするプロトコルです。具体的な応用シナリオとしては次のような場面で特に有効です。[6]
以上を踏まえると、A2A とMCP の統合は以下の要件に合致すると言えそうです。
「外部データソースに対して読み取り/書き込みなどを含む複雑なタスクをエコシステム内に散在する多数の異種AI エージェントを連携させながらシステム横断的に実行する」
最後に - CData製品が果たす役割
この両プロトコルの統合を実現する上で、重大な課題が存在します。それは、AI エージェントが実際に企業システムや SaaS アプリケーションのデータへアクセスし、操作するためのインフラをどのように構築するかという点です。企業が利用する多様なシステムそれぞれに対し、MCP サーバーを個別に開発・保守するアプローチは、現実的とは言えません。実際、企業における AI 活用はデータ基盤の成熟度が成否を左右する一方で、AI 部門責任者がデータ基盤に対して感じている満足度はわずか6%にとどまることが報告されています。
AI データコネクティビティの現状レポート― 2026年の展望 - CData Software
これらの課題に対するソリューションを、CData の製品群が提供します。データ連携を効率化・自動化する豊富な製品ラインアップに加え、400 種類を超える API に標準対応した 「CData MCP Servers」を提供しています。これにより企業は、ゼロから接続機構を開発することなく、AI エージェントを既存システムへ迅速に接続することが可能になります。さらに、世界初のマネージドMCP プラットフォームである 「CData Connect AI」により、MCP サーバーの運用・管理に伴う負担も大幅に軽減されます。
業務システムのデータ活用はAI におまかせ | CData MCP Servers
CData Connect AI | あなたのビジネスを理解するエンタープライズAI
最後に弊社ブログページではAI やMCP を使用した実践的なデータ連携シナリオをご紹介しています。ご興味のある方は、ぜひご一読ください。
参考文献
[1] Ray, P. P. (2025). 'A Review on Agent-to-Agent Protocol: Concept, State-of-the-art, Challenges and Future Directions. Authorea Preprints'.
[2] Bandi, Ajay & Kongari, Bhavani & Naguru, Roshini & Pasnoor, Sahitya & Vilipala, Sri. (2025). 'The Rise of Agentic AI: A Review of Definitions, Frameworks, Architectures, Applications, Evaluation Metrics, and Challenges'.
[3] Peng, L., Li, D., Zhang, Z., Zhang, T., Huang, A., Yang, S., & Hu, Y. (2024). 'Human-AI collaboration: Unraveling the effects of user proficiency and AI agent capability in intelligent decision support systems'.
[4] Inala, R., & Somu, B. (2025). 'Building Trustworthy Agentic Ai Systems FOR Personalized Banking Experiences. Metallurgical and Materials Engineering', 1336-1360.
[5] Sapkota, R., Roumeliotis, K. I., & Karkee, M. (2025). 'Ai agents vs. agentic ai: A conceptual taxonomy, applications and challenges'.
[6] ken11, (2025). '実践 MCP - Model Context Protocol -', https://techbookfest.org/product/pCKLKMZBWC8MDKDWYwshkq